2016年3月6日日曜日

タイトルの話

これまで発表した小説のタイトルについて色々と思い返していました。
よく「ラノベのタイトルは編集者が考える」といわれますが、私にはそのような経験がありません。
私はどちらかというとタイトル先行で発想するタイプですが、いきなりタイトルを思いつくのではなく、ぼんやりとしたアイデアがあって、そこにタイトルがつくと一気に道筋ができる、ということが多いです。
(以下、執筆順)

○『耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳』
「万歳万歳万々歳」の部分は西太后の写真から(「西太后」で画像検索すると出てきます)。
響きがかわいいので借用しました。
この大袈裟で馬鹿馬鹿しいイメージのタイトルが先に決まったことで、まだ書かれていなかった物語の色調も決定づけられたように思います。
出版前に一度、担当氏から「タイトルどうします?」ときかれたので、「そのままで」と答えたらそのままになりました。

○「ちいさな耳刈ネルリ」
『耳刈ネルリ拾遺』所収のものについては「解題」でコメントしましたが、これについては何も書いていませんでした。
ネルリが小さいことと「大ネルリに対する小ネルリ」ということがかかっています。
どうして「ちいさな」と平仮名にしたのかは不明。

○『耳刈ネルリと奪われた七人の花婿』
ミュージカルネタをやろうと考えたときにすぐ思いつきました。
元ネタは『略奪された七人の花嫁』というミュージカル映画です。
当初ミュージカルをやるつもりはなく、以前このブログで書いたように『ネルリ三世』を大真面目にやるつもりでした。
それが没になって次に出したのはゴリゴリのシリアスストーリーで、タイトルは『イ=ウのための練習曲(エチュード)』というのを考えていました。

○『耳刈ネルリと十一人の一年十一組』
当初は『耳刈ネルリ節句ステップジャンプ』というのを提案していました。
どうしても「セックス」って入れたかったんですね。
原稿を見返してみたところ、第一稿ではタイトルが『節句と嘘とネルリ未来記』になっていました(またセックスだ……)。
第二稿でようやく現行のタイトルが出てきていました。

○『菊と力』
けっこう悩んだおぼえがあるのですが、プロットを見てみたら最初からこれでした。
当時は「日本語でしか書けないものを書きたい」というような意識があって、「外国から見た日本」という連想で『菊と刀』からタイトルを借用しました。
本作は身近にいる人へのメッセージとして書いたもので、彼に力を与えたいと思って「刀」を「力」にしたのでした。
他には『Folding Japblade』というのも考えていました。
外国に輸出された折りたたみ刀が暗殺用の武器として畏れられ、蔑まれている、というイメージです。
作中で更子が似たような感慨を持つシーンがありますね。
以前このブログで書いた「バージョン3」のタイトルは『ノースサウス あるいは恋に変わる肉の内なる刀の力』でした。
長い! と思ったら『カマタリさん』の方が長いですね。

○『平家さんと兎の首事件』
これは同人誌として出すときにつけたものです。
第一稿では『平家さん敗北記』でした。
本作のタイトルは中身同様かなり迷走したため、無数の候補があります。
『平家さん怨(おん)パレード』とか『平家さんと無念の海』とか『滅びよ清和源氏、と平家さんはいった』とか『同居人が平氏の怨霊で同級生だった』とか『muni×kiss(無ニ帰ス)』とか『平家さんは耳をもがない』とか……。
後半はヤケクソですね。

○『クズがみるみるそれなりになる「カマタリさん式」モテ入門 』
以前ツイッターの方で書きましたが、最初は『かまたれ! カマタリさん』というタイトルでした。
より正確にいうと、タイトルだけが存在し、中身がない状態だったのです。
初稿完成後、本全体を自己啓発本のパロディにしようと提案して、それっぽいタイトルをいくつか考えました。
その内のふたつを担当氏がくっつけて現行のタイトルになりました。

○『後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール』
最初は「好球必打」にかけて『後宮筆談』でしたが、刊行が決まった段階で「野球要素を入れて」というリクエストを担当氏からいただいて『後宮楽園球場』にしました。
その後、「サブタイトルをつけて」といわれましたので、最初は「ガールズ・アット・バット」というのを提案しましたが、のちに現行のものに変えました。
サブタイトルは「ハレム」の語源になった「ハレムリク(私的な場所)」ということばから来ています。

○「平家さんって幽霊じゃね?」
長編版『平家さん』を下敷きにして書いたのですが、タイトルはパッと思いついてそのままです。

○『アクマノツマ』
sunn 0)))というバンドとBorisというバンドがコラボしたアルバムに"Akuma No Kuma"という曲がありまして、そこから取ったような気がします。
初稿を見たら『新妻で悪魔妻な俺のおさな妻』というクソみたいなタイトルが併記してありました。

○『四人制姉妹百合物帳』
「四人制姉妹」というフレーズがまずあって、そこに『半七捕物帳』のオマージュというアイデアが融合して生まれました。

○『明日の狩りの詞の』
元ネタは巻末の参考文献にもある『後狩詞記』です。
これも最初から決まっていた……と思ったのですが、今回ネルリシリーズに続く作品のアイデアとして提出した中に別タイトルを発見しました。
概要も併せて以下に転記します。

『狩猟採集戦争』
 北海道の女子が謎の外来生物を国立公園から駆除しているとき
 福井県の女子は空爆後の池でエビを釣る
 シベリアの女子がトナカイの群を襲う獣を追跡しているとき
 人工女子は惑星から飛び立つ「白鯨」を撃つ
 僕らは狩りの記憶をリレーしている

何か凄そう……ですが、これを見せられた担当氏の心中は察するに余りあります。

○『ヴァンパイア・サマータイム』
最初に思いついてそのままです。
過去のファイルを掘っていたら『冴原先輩吸血鬼説』という別ネタが出てきて、ちょっとおもしろそうでした。

○「地下迷宮の帰宅部」
部活物というお話をいただいて、寝て起きたらタイトルとラストが浮かんだので慌ててメモしました。
他にもネタを出していて、『アクマノツマ』を下敷きにした「悪魔召還部の誤算」、『四人制姉妹百合物帳』を下敷きにした「百合種(ユリシーズ)の姉妹たち」、『明日の狩りの詞の』を下敷きにした「封鎖都市の狩猟部」というのがありました。

○今度出るやつ
立案当初からずっと同じです。
近い内にアナウンスがあると思いますので、どうぞお楽しみに。